活動8年の大ベテランコンビ、富士葵さんとキクノジョーさんをお迎えした第2夜(前後編)。編集100%・企画8割の分業とストックゼロのパズル進行、所属と独立のリアル、そして裏方だったキクノジョーさんの「出ます」宣言の裏側まで、夜更けの店で本音が続く。
- 編集はノジョさん100%、企画は葵さん8割、サムネは葵さん、契約まわりはノジョさん。こだわりが強すぎて外注は断念
- ストックはゼロ、素材の「卵」は多数。3Dプリンターと料理の仕込みを組み合わせるパズル進行で最低週1本
- 独立して稟議のドキドキから解放。一方でスタジオ・技術・法務は「企業のありがたさ」だったと率直に
- 「出るんやったら、もう宣言して出るで」——友人の後押しで決めた宣言と、去った人・残ってくれた人
- 波を立てる葵さん、コツコツ進めるノジョさん。10周年は「目標にしなくても行くんちゃう?」
- 新曲「Golden Drop」はノジョさん作詞。紅茶の最後の一滴に込めた、大切なひととき
V業界を牽引してきた2人!所属と独立で変化?こだわり故の悩みも
閉店後の喫茶Laid-Backに気になるゲストをお呼びして、本音を聞いちゃう対談トーク。今夜のご来店は、V業界を8年牽引してきた富士葵さんとキクノジョーさん。編集100%の分業体制、こだわりゆえの外注断念、そして所属と独立の本音。前編の一杯目。
「こだわりを込めてないものって当然伝わらへんや」
「唯一自由に羽ばたける場所だと思ってたから」
カランカラン、ご来店
第2夜のお客さまは、V業界を8年牽引してきた富士葵さんとキクノジョーさん。れいとの付き合いも実は長い、久々の再会となった。
本日、閉店後トークに来てくださったのは——富士葵さんとキクノジョーさんです!よろしくお願いしまーす!
カランカランカラン♪
……そこ、ドアだったんですね。
言いたかっただけやろ(笑)。みなさーん!富士葵でーす!
キクノジョーでーす!お願いしまーす!
懐かしいなあ!
葵さんとはこの間お会いしましたけど、こうしてゆっくりお話しするのは久々ですよね。何年ぶりですか? 5年?6年?
それこそ8年じゃない? めっちゃ最初の方やったと思うよ。
そんなに前でしたっけ……当時はよくお会いしてましたね。最近のお二人は、実験系というか研究系というか、アカデミックな内容の動画が多いですよね。
編集100%、企画80%
お二人って、どう役割分担されてるんですか?
めちゃめちゃはっきりしてるのは、編集はキクノジョーがやってくれていて。これはもう100%。
企画は葵があげることが多いかな。キクノジョーもたまに「これどう?」って言ってくれる感じ。
ブラザーが8割ぐらいかな。
サムネイルは葵さんが作ってるって、この前お会いしたとき言ってましたよね。
で、外との交渉ごと——お金のこと、請求書、契約とかの書類になってくるとキクノジョーがやってくれてて。葵はちょっと分かんないから。
しっかりしてますね……。私てっきり、8年も活動されてるから、動画は外注してるのかな、サムネ専属の方がいるのかなと思ってたんですよ。
一時期は考えてたんだけど。結局「ここのテロップもうちょっとこうしたいです」とか考えたら、これ自分たちでやったほうがいいよなって。こだわりが強すぎて、フィードバックがめちゃくちゃ細かくなっちゃうのよ。
「ここ、何フレーム切ってください」みたいな話になるから。それは面倒ってなるよね、絶対。
そのレベルだと、最終的に自分たちでやったほうがいい、となったんですね。
これはみんな悩んでると思うよ、動画の人はね。
みんな上に行こうっていう心があるから、動画のレベル自体、初期と比べたらほんと上がってるんで。
昔はほぼみんな毎日投稿とかね。夜の7時とかに、みんなの動画がブワーって一斉に上がるのよ。
思い出したら具合悪くなってきた。寝られない日々。焦るし。
ストックゼロ、パズル進行
今までに存在しないものを制作したりするじゃないですか。どれくらいの頻度で制作・収録してるんですか? ストックってどれくらいあるものなんですか?
収録頻度は少なくて、制作の時間の方が長いのよ。3Dプリンターを待たないと当日撮れない、みたいなのがあって。
「じゃあこれ、今から作り始めます。3Dプリンター、何日かかります」……
その間に次の動画の冒頭だけ撮って。「これは料理系だから、これくらい仕込みがかかります」って仕込んでる間に3Dプリンターが完成しました、じゃあ続きを撮りましょう……って、複数本を組むパズルみたいな進行で。
結果として、最低でも週1本は出そうって頑張ってる感じかな。
あのクオリティを週1で出すの、めちゃめちゃすごいと思います。聞いてるだけで「ガントチャート必要じゃん」って思いました。進行管理はどちらが?
記憶と、チャンネル用のDiscordに「今日撮るもの」をまとめてるのと、Googleカレンダーかな。
ストックは……?
ストックはゼロだね。ただ、素材の「卵」みたいなのがいっぱいある。
そしてここから、まさかのファイル名論争が勃発する。
ファイル名は半角英語の掟
素材管理はね……ファイル名は半角の英語でって、めっちゃ厳しく言ってるんだけど、ブラザーが全然守ってくれへんのよ。
やってるじゃん! もうやってるよ!
サムネはブラザー担当やんか。そこだけ自由に名前つけちゃうから。Discordで共有してもらうんだけど、Discordって日本語のファイル名は化けるのよ。数字だけになっちゃう。
化けますよね……日本語の部分、なくなっちゃいますよね。
ファイル名だけは、唯一自由に羽ばたける場所だと思ってたから……ごめんごめん。
共有する前に変えておいてほしいなあ。ファイル名が消えると、検索にも引っかからんくなんねん。
「直してほしいところ、あります?」
この流れで聞きたいんですけど。お二人、いいこともいっぱいある反面、「これ直してほしいんだよな」って、なきにしもあらずだと思うんです。葵ちゃん側からキクノジョーさんに、あります?
いっぱいあんで。
編集について口出しすると切れる、とか?
まあまあ……お互いにこだわりがあるのよ。葵も編集にすごくこだわりがあって。「バンって言ったら、ここでバシッとカットしてほしいの」みたいな。
言うタイミングもむずいのよ。早めに言うと「それ後でやろうと思ってた」ってなるし、後から言うと「もうそこ直すの大変だよ」ってなる。
確かに、今それ言われて気づいたけど、言うタイミングむずいな(笑)。
だから1回ちゃんと話し合ったの。「編集、口出してもいいですか」って。葵チャンネルは2人で動画を作り上げる。お互いにサムネに口出さないとか、そういう遠慮はなしにしようって。
お二人のこだわりをぶつけて、さらにいいものになる。8年やってても「もうこれでよくない?」にならないの、めちゃくちゃ素晴らしいと思います。
こだわりを込めてないものって、当然伝わらへんやん。そこはこれからも折れずにいこう。
所属と独立のリアル
事務所を経て、いまは独立して活動するふたり。「こだわりは出しやすくなった?」というれいの問いに、答えは率直だった。
なりましたね、それは。期限に追われることもないし、「これ作ると何万かかるな」みたいな予算も、自由にやりやすくなった。
稟議を通すときって、めんどくさいとかではなくて、ドキドキするやん。「通るかな」って。しかも難しいのが、YouTubeって「これ絶対いけます」って思ったものが必ず伸びるわけじゃない。
伸びそうと思ったものが伸びなくて、全然伸びないと思ったものが伸びる、ありますよ。
そうそう。だから「ご迷惑をかけてしまうんじゃないか」っていう申し訳なさ、プレッシャーがあって。そこから解き放たれたのは大きいかな。
逆に「企業の方がやりやすかったな」っていう点は?
いっぱいあるね。一番大きいのはスタジオを使わせていただきやすい環境とか。あと、プロの方たちに囲まれて技術を勉強できるのも大きかった。「うわ、そんなことできるんすね」みたいな。
客観的なフィードバックがもらえてた。あとは——契約書を法務の人に回せてた。契約書読むの時間かかるからね。あれはマジででかい。
料理系だとキッチンスタジオをお借りすることが多いんだけど、食材を持って帰らないといけないのがめっちゃ大変で。「冷蔵庫、入れさせていただいていいですか」が前はできたから。
個人の良さもあるけど、企業の良さもどっちもある、と。
どっちもありますわ。本当にありがたい環境でした。
逆質問——れいの「ぶれない軸」
終盤、マイクの向きが変わる。「聞きたいこと、いっぱいあるな」——逆質問の時間だ。
れいちゃんが活動半年経って、いま改めて思ってることとか、「ここだけはこだわりたい」っていうれいちゃんのこだわり、気になるかも。
半年経って「これがめっちゃ変わったな」は、あんまりなくて。たぶん、デビュー前にコンセプトを結構決めてたからだと思うんです。「がんばる大人のための、ちょっと良い時間にしよう」って。
疲れてる、頑張ってる大人が、わざわざ時間を私に使ってくださるから。見た後に「何を見たかあんまり覚えてないけど、なんかちょっと良かったな」って残るものがあればいいなと思って。そこは意識して頑張ってるところですかね。
伝わってる。時間ってすごく大切なものだけど、それを有意義にしようっていう根幹のぶれない感じは、動画見てても配信見てても、めっちゃ伝わってます。
にじみ出てるところがあるのよ。コンセプトワークをきっちりやってるのが、めちゃくちゃれいちゃんぽい。
え、嬉しい……。
対談はまだ夜半、ここで前編は幕。裏方だったキクノジョーさんの「出ます」宣言の裏話は、後編へ続く。
裏方からコンビへ!"決意表明"の裏話、今後やりたい目標とは?
閉店後の喫茶Laid-Backでの一夜も後編へ。お客さまは活動8年目のコンビ、富士葵さんとキクノジョーさん。裏方だったキクノジョーさんの「出ます」宣言の裏話から、10周年へ向かう二人の目標まで——夜も更けた店で、なお本音は続く。
「最初のやりたいがねブラザーがいないとうちはないから」
「宣言したからこそじゃあ見ないわみたいな人はその時にもうバイバイ」
「出ます」宣言まで
夜も更けた喫茶Laid-Back、後編はれいからキクノジョーさんへの質問から始まる。8年前は裏方だった男が、画面に立つと決めるまで。
ノジョさんにも聞いてみたいことがありまして。8年前は割と裏方っぽいムーブをしていたイメージなんですけど、途中から宣言して、お二人三脚で活動されてますよね。あれは話し合って決めたんですか?
どうしても画面上に一人だと、やりたいことができないのよ。掛け合いしたいし、ボケたら突っ込みたいし。どうしようか悩んでた時期が、しばらく長いことあって。
同じ活動してる友達に相談したら「いやいや、絶対出た方がいいでしょ」「出るんやったら、もう宣言して出るで。えいやでやってもうたらどう」って言われて。「あ、それいいね」ってなった。
「出ます」の宣言は、その友達のアドバイスありきだったよね。
当時って、一人で出るのが主流だったやん? 男女コンビが本当になかったの。「葵チャンネルが伸びないのは、この男女コンビなんじゃね」みたいな話をいただいたこともあって。
実は私も、VTuber事務所のスタッフをしていた頃、タレントさんに「2人で喋りたい」って言われて画面に出ていた時期があったんです。でも受け入れてもらえない時期もあって、悩んだことがあって。お二人は宣言して、すぐ受け入れてもらえました?
「あんまりだな」っていう声は全然あったよ。いまだにね。でも今はもう減った。
宣言したからこそ「じゃあ見ないわ」っていう人は、その時にもうバイバイって去ってしまった。寂しいけど。それでも見てくれる人と、このスタイルから見始めてくれた人がいるから、今は大丈夫だね。
波を立てる人、進める人
葵ちゃん的にも、2人で掛け合いがあるほうが安心して出られる、っていう気持ちはありますか?
そう、本当に葵は喋るのが下手だから。一人だと「何を喋ろう」ってなるタイプだから、すごくありがたい。
ノジョさんが葵ちゃんに感謝しているところは?
活動に波を作ってくれるところかな。「こういうことやった方がいいんじゃない」って先々の話をするの、僕は実は苦手で。どっちかというと、目の前のことをコツコツ着々と進めるタイプだから。
一番最初の波を立ててくれるのはブラザーなのよ。「これやりたい」って。最初の「やりたい」がね、ブラザーがいないと、うちにはないから。僕のソロチャンネルだったら、多分ほんとに波のないチャンネルになってた。
「やりたい」はよく言ってるね(笑)。
で、「じゃあそれいいね、やろう」ってなったら、何が必要で、どういう人と話をして……っていう目の前のコツコツは僕にもできるから。そこはありがたいね。
共感できるな……。私、ノジョさんタイプだと改めて思いました。
似てるんちゃうかな。当時も言ってたもんね、「わかる」って。
10周年と、その先へ
直近の目標はどうですか? 10周年、目指して……とか?
なんだかんだ、もうあと2年になっちゃったからね。
10周年は、目標にしなくても行くんちゃう?
頼もしい……!いいですね。
最近「こんな先生だったら、ちゃんと学校で勉強したのにな」みたいなお声をいただけるようになってきて。学校とか科学館とか、"学"に食い込んでいく活動ができたら、めっちゃ面白いやろなと思ってて。お子さんだけじゃなくて、年齢関係なく、科学とか勉強を楽しんでいただきたいな。
あとは——今まで動画で作ってきたものを、全部保管してるんですよ。倉庫を借りて。動画だけだと分かんないけど、実際に持ってもらうと分かる、みたいなのがあるで。展覧会もしたね。
いいな、行きたい!
僕がずっと言ってるのは、9月9日のキクノジョー誕生日配信——ブラザーの意見を全てシャットアウトして、僕が一人でやる唯一の配信ね——あれを舞台化したい。
どれぐらい予算がかかるんでしょうね……。
したいという気持ちだけでね、どっから手をつけていいか分からへんで。
あと、これは葵の個人になっちゃうけど、音楽を今、改めて握り直してる。どんな音楽が好きかなを突き詰めながらやってて。アルバムを新しく出したら、ライブとかもまたやりたいなって。音楽熱量アップ時期。
それぞれの個人目標も、2人の目標もあるということで。めちゃめちゃ楽しみにしております。
新曲「Golden Drop」と、お会計
「後半真面目になっちゃってごめんね」と笑う葵さんに、れいは「この番組は本音でおしゃべりしていくトークなんで」と返す。最後は宣伝タイム——そして閉店後の店らしいオチも。
新曲が出ました。「ゴールデンドロップ」という曲で——紅茶の、最後の一番おいしい大切な一滴のことなんだけど。日々いろんな生活が大変だったりするかもしれないけど、そのひとときを聴いて過ごしていただける曲になりましたので、ぜひ聴いてください。
ゴールデンドロップ、僕が作詞したので。詩の世界に浸ってください。
ちょっと待って、曲名はどちらが?
曲名は僕です。
やっぱり! おしゃれだと思ったら、ノジョさんっぽいなって。
実はもう一個悩んだ曲名があるんだけど、すごーく有名な同じタイトルの曲があってやめました。これはちょっと裏話ね。
ということで、そろそろお時間となりました。皆さん、葵さんのニューシングル「Golden Drop」、それから8周年ライブもすごく良かったので、ぜひ。本日は本当にありがとうございました!
「閉店後とはいえ、お会計してもいいですよ」——閉店後の店らしいひと言には、「また来てくださるってことで、今日はつけときましょうか」とマスター。第2夜は、こうして幕を下ろした。